今回はボーカルの下処理としてよく使われる「ディエッサー」の比較です。
実際にボーカル録音をしてみると分かるのですが歯擦音(SやT)というのは結構厄介です。
空気感や明瞭感を出したくてEQを高域に掛けたのに耳障りな成分まで一緒に持ち上がってしまうことは非常によくあります。
また、題名にもある通りSoftubeの「Deesser」を商品提供頂いているのですが他の製品もちゃんと利点を上げて書いていきます。
そして私のモットーとしてよくある紹介だけの記事にならないように、所持しているものを実際に使って比較します。
みなさんのプラグイン選びの一助になれるような記事になっていますので最後までご覧ください。
ディエッサーって?
少し前述しましたが、主にボーカル録音で歯擦音(シビランスともいう)を低減させるためのエフェクトの事です。
サ行が大半ではありますが他には[s][z][ch][j][sh]などの子音も影響しています。
個人差はありますが3KHz~12kHzぐらいに突発的な音量の増加がみられます。
私の声で恐縮ですが、一例をお見せしましょう。
「あかさたな」と喋っています。
「さ」だけ高域にピークが出ているのがお分かりいただけるかと思います。
これが歯擦音でありシビランスであります。



これを抑え込むのが「ディエッサー」です。
要するに「高域特化のマルチバンドコンプレッサー」なので、マルチバンドコンプレッサーを持っていれば同じようなことが出来ます。
しかし、そこにメーカー独自のアルゴリズムや処理方法を積むところに各プラグインの特色が出ます。
ボーカルのみにしか使えない?
歯擦音の説明ばかりしたのでボーカルにしか使えないかと思われますが実際はそんなことありません。
高域の耳障りな音を低減してくれるので、シンバル類やアコギ、パーカッション系にも使うことが出来ます。
そして、ここも各プラグインの特徴になってくるのですが、「ボーカル特化」か「楽器にも使用可」かの違いです。
ここもプラグイン選びの大事なポイントになってくるので加味してみてください。
各製品概要
お待たせしました。
ここから製品概要と比較に入ります。
今回比較するのはSoftube「Deesser」を含めた下記5製品です。
Waves「SIBILANCE」
Techivation「T-De-Esser 2」
IK Multimedia「TR5 DeEsser」
StudioOne純正「De-Esser」
1.Softube「Deesser」
シンプルでパワフルなDeesserは、オーディオ全体の音質を損なうことなく、より滑らかで自然なサウンドを実現します。 シンプルなインターフェース で 、ボーカルの明瞭度を直感的に向上させ 、 歯擦音を抑制できます 。Deesserは 低レイテンシー と 低CPU負荷で、 トラッキングに最適です。使いやすい 周波数検出、相対スレッショルド、そして 透明感のあるサウンドは、ボーカルトラックからフルミックスの耳障りな周波数 まで、Deesserをなくてはならない存在にしています。
本家サイトより引用
今回の注目プラグインですね。
先月4月に発売されたばかりの新製品でどんな出音なのか非常に気になるところです。
前評判では、GUIの見やすさとクリアな音質が好評なようです。
定価は約\12,000-ですが、同時に出た「Vocal Tuner」に無料でこの製品が付いてくるパッケージもあります。
そちらはセール時で約\15,000-となっているのでお得感は強いです。
2.Waves「SIBILANCE」
Wavesは3~4つディエッサーを出していますが、今回はこちらを比較対象として出していきます。
というのもこれを私はディエッサーのファーストチョイスで永らく使っていたからです。
Wavesが新たに開発した革新的なOrganic ReSynthesisテクノロジー
Organic ReSynthesisを搭載するSibilanceは、かつて無い精密さで”ス”、”シュ”といった歯擦音を特定し、なめらかで雑味のない、効果的なディエッシングを実現します。しかも元のボーカル素材の質感や伸びやさ、自然な倍音感をすべて保ったまま処理することができます。
Sibilanceのユニークな方式によって、元のボーカル・トラックから歯擦音のパートだけが抽出、処理されます。これによりボーカルにもっとアグレッシブなEQを施すことも可能になります。
Waves独自のテクノロジーが搭載されています。
このプラグインがどのような評価になるのか楽しみです。
価格は、定価は約\12,000-ですが常時しているセールの場合、約\5,600-となります。
3.Techivation「T-De-Esser 2」
最近のお気に入りメーカーのTechivation。
バージョンアップした「T-De-Esser 2」も比較対象に入れていきます。
確かな技術を持った気鋭の企業なのですがなんとこちらは「無償配布」されています…!
無料だからと言ってクオリティを落としてくるとも考えづらいので、どこまで有料製品たちと戦っていけるのか注目です。
4.IK Multimedia「TR5 DeEsser」

この中では1番の古株かも知れません。
最近バージョンアップしたT-Racks6の中に同梱されているディエッサーです。(Pro以上のみ)
単体価格は約\8,000-ですが、IK Multimediaはバンドル購入ほぼ一択です。
例えば、TR6通常版バンドルは、19製品入って\4,200-というあたおかセールをしています。
詳しい話は過去のブログをご覧ください。
今回のDe-Esserは入っていませんが、上位版もこのレベルでいずれ大きく価格を落とすことが予想されます。
是非タイミングを見計らってください。
5.StudioOne純正「De-Esser」

そして私が使っているStudioOneの付属ディエッサーです。
前は無かったのですが、少し前に追加されており特に触ってこなかったので「もしや凄いのでは…?」と胸を高鳴らせています。
5製品の比較
今回の比較にあたり、歯擦音が多く入った歌詞の短い曲を作りました。
私の声で恐縮ですし、さらに!
男女の比較もあった方が良いだろうということで奥さんにも協力してもらいました。
人間の声だけでなくボカロにも使用できるため、男女2声は良い比較になるんじゃないかと思います。
動画で一気に比較していきますが、さすがにオケがあると邪魔なので声のみでお届けします。
男性ボーカル
女性ボーカル
個人的レビューと比較
音質
個人的にはSoftubeとWavesが良い勝負でした。

勿論他の3製品も良いのですが完全に個人の好みであることを改めてお伝えしておきます。
今回の動画では最大-8~9dBの圧縮を目安に各プラグインを調整しましたが、もう少し強めにかけてみた(-13dBぐらい)時の音質も同じ感想でした。
というよりも他の3製品が歪んで聴こえてしまいました。
Techivationは「quality」というパラメーター(オーバーサンプリング)で音質を上げることが出来ますが、負荷がめちゃくちゃ高くなります。

SoftubeもさることながらWavesも非常に好印象です。
ちゃんとボーカルの耳に痛い部分を検知して押さえてくれていて、独自のテクノロジーが上手く作用していると思います。
操作感&視認性
ここはSoftubeが1番でWavesが次点でしょう。
どのタイミングでどこの周波数がどのぐらいリダクションされているかが非常に見やすいです。
WavesはGUIの大きさが変更できれば言うこと無しだったのですが…。
他の機能で言うとSoftubeは「相対スレッショルド」を採用しており、元々の音量に関わらず波形の周波数バランスを整えられるようになっています。
それにより、前段までで音量調整をせずに済むのは助かります。
また、この中で唯一DRY/WET機能が付いているので歯擦音の処理がよりしやすいです。
少しきつめにかけてDRY/WETで調整するのが個人的に好みでした。
TechivationとIK Multimediaはやや味気ない感じがありますがまぁまだ許容範囲かなという気がします。
StudioOneの操作感と視認性は個人的にはあまりピンときませんでした。
ほんと、StudioOneは純正プラグインのGUIさえ変われば…とずっと思っているのですが、なかなか願いは届かないようです。
適用する周波数
周波数の調整をほぼどのプラグインも行うことが出来ますが、Wavesは出来ません。
MODEで適用範囲を調整するのみとなっています。

Techivationはあらかじめ決められた4つから選び、studiooneは12KHzまでとなっていて、IK Multimediaも最高13KHzまでとなっています。



後述する汎用性にも繋がってくるのですが、シンバル類や別のトラックに使用することを考えた場合、ここは自由度が高い方が良いなと感じました。
汎用性
各プリセットを見てみるとそのプラグインの想定される使い方がなんとなく分かります。
ボーカル以外のプリセットがあったのは、SoftubeとTechivationのみでした。

Wavesはボーカル特化らしい非常に良い検知システムなので納得できましたが、他の2つもそうだったとは知りませんでした。設定できる周波数を鑑みればまぁ確かにその通りとはなるのですが。
CPU負荷

意外な結果となりました。
Softubeが「2」Techivationが「6」となっています。ちなみにTechivationのqualityは4段階中のレベル2(good)に設定しています。
驚異的なのは他の3つです。
負荷が2というのも全然軽い部類なのですが全然負荷がかかっていないんですね。
環境によって違うので何とも言えませんが、現状のシステムと照らし合わせて勘案ください。
なんかずるい気がしてきた
Softubeを良く言い過ぎている気がしてきました。
実際に思っていることなのですが、あえてデメリットを考えてみましょう。
結局、専門職
EQやコンプと言った定番エフェクターとなるとプロジェクトの中で出動する率は非常に高くなりますが、歌ものでなければディエッサーは正直使わないことがほとんどです。
大事なエフェクトではあるのですが、重要度は他のものより劣ると思いますし、最初に書いたようにマルチバンドコンプレッサーなどでも同じような処理が出来ないことは無いです。
しかし「餅は餅屋」という言葉があるように専門的なプラグインを常備しておくことも大事であって、その中で考えたいのは「たまーに出勤してくれる専門プラグイン」のコスパです。
デモ動画でもわかる通り、今までにない画期的な音質やボーカルが生まれ変わるような効果というわけではありません。あくまでも専門職であり昔から使われているディエッサーなのです。
勿論、ガチプロのエンジニアはこれしかないという「伝家の宝刀」をお持ちなのでしょうけれど「いや、僕はそこまで…」という方は色々鑑みてみる必要があると思います。
代用できるプラグイン
前述したマルチバンドコンプレッサーでも代用できるし、最近記事にした「レゾナンスサプレッサー」系のプラグインでも正直代用可能です。
代表的なもので言えば「Soothe2」でしょうか。
実際プリセットの中にも高域特化でディエッサーとしての設定がしてあるものがあります。むしろソースによってはそっちを好んで使っているプロもいらっしゃいます。
他の競合製品
今回は実際に所持しているプラグインでの比較となりましたが,、私が持っていないだけで高名で評価の高いディエッサーは沢山あります。
ここでの比較相手が変わっていたらどうなっていたかは正直分かりません…。
FabFilter Pro-DS
Sonible smart:deess
Solid State Logic SSL DeEss
Softube Weiss Deess
DMGAudio TRACKDS

プラグイン沼に持っていかれる
ディエッサー沼もかなりの深さがあることが分かってしまいました。
前回「レゾナンスサプレッサー」の比較をした時にはどれも単体プラグインばかりだったので純粋な比較となりましたが、今回はバンドル製品や無償配布品も入っていたので個人的には難しい比較でした。
今回の5製品を端的ににレビューするなら、
汎用性・視認性・音質を高水準で求めるならSoftube「Deesser」
ボーカル特化でコスパを大事にするならWaves「SIBILANCE」
無料が良い!もしくはまだ持ってないならTechivation「T-De-Esser 2」
シンプルが良い!バンドルを買う予定があるならIK Multimedia「TR5 DeEsser」
StudioOneを使っていて特にこだわりが無いならStudioOne純正「De-Esser」
という感じになるかなと思います。
Softubeの使いやすさがこれから手に馴染んでくれたらいいなと思います。
それと今回の検証のためにトラックに5個のプラグインを指して切り替えながら使っていたのですが、2~3個合わせて使っている時が一番自然で良かったのですが、こういう使い道もありなのでしょうか…?
…良いTipsを見つけてしまったかもしれません。
ぜひ各製品のデモを試してみたりしてみてください。
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