Ozone11が発売されたのが2023年9月。
2年の時を経て、新機能を引っ提げて進化して戻ってきたOzone12。
もうほんとに発売おめでとうございます。
あなた無しでは生きられない身体になってます。
ということで、今回はそんなOzone12を解剖していきつつ、諸々の所感・レビューをしていきたいと思います。
内容としては以下のとおり。
やっぱり素敵な新機能
AI精度が大幅に向上
結局「買い」なのか…?
製品概要
業界初となる新機能を含む、合計20のプロフェッショナル・モジュールが不可能を可能にします。
過度に圧縮されたオーディオのダイナミクスを復元する業界初となるUnlimiter。
低域の直感的な可視化と完璧な調整を可能にするBass Control。
新たなStem EQはミックスに戻らずにボーカル、ベース、ドラムなどの微調整を可能に。
Ozoneのファンに愛されるMaximizerにはトラックのパワーとクリアさを最大化しながら、従来のトレードオフを排除した新アルゴリズム IRC 5 Modeを搭載。
さらにあなたの判断やルーティンを反映可能なカスタムMaster Assistantフローを実現しました。
その他幾つかのモジュール精度や機能改善により、Ozone 12はこれまで到達できなかったオーディオの領域を制御する無数のツールを、単一のエコシステムで提供します。本家サイトより引用
新機能が盛りだくさんな上にAIの精度や提案される処理も頭が良くなったように感じます。
私のOzone遍歴は、9Ad→10Ad→11Stなのですが、12のAdvanceを今回使ってみて「こりゃいいね」となり、マスター段に刺さっていたEQとコンプをひとつずつ外しました。
そのぐらい久々の衝撃のファーストインプレッションでした。
1.新機能について
IRC5 新マキシマイザーモード

もう既に各所で言われていますが私もこの新アルゴリズムを備えたマキシマイザーがかなりお気に入りです。
透明性を保ちつつラウドネスを上げていける、まさに良いとこ取り状態です。
GRグラフを見てみると、リダクションされている量が明らかに違います。
動画のように同じ量を突っ込んでも全然潰れてる感じがありません。
同じGR値まで上げようとするとポンピングが起きて破綻しましたが十分「やりすぎ」の範囲内でした。ここまでやらなければ大丈夫です。
このことから、「マルチバンド的な処理」や「アタックタイムの変化」などのアルゴリズムが進化して圧縮しすぎることなくクリーンさを保っていると言えます。
UnlimiterとBass Control
Unlimiterでダイナミクスを復元

これも非常に面白いツールです。
「過度に圧縮されたオーディオのダイナミクスを復元する」と謳われているようにマスタリングをする前に音源を戻してくれるとのこと。

ということでパツパツにマキシマイザーを掛けたものを準備してきました。
もっとパツパツにしても良かったのかな?とも思ったし、バイパスもこれはこれで良いやんってなりましたが、少し隙間が出来たような感じでした。
使い方としては、
歌ってみたなどのカラオケ音源のダイナミクス復元
が主になるのでしょうが、
デルタボタンを使用して損失部分の確認
ダイナミクスのあるオープンな音源
という通常のマスタリング時でも「使える」と感じました。
Bass Controlで低域を盛る

「Low End Focus」という別のモジュールが調整役だとするならば、こちらはイケイケの盛り上げ役です。
「Balance」でレベル、「Punch」でアタック感を操作できるのが一瞥して理解できるUIの優しさもさる事ながら、「Sustain Power」がアップワードコンプ、「Peak Control」がダウンワードコンプのように働き低音の量感を保つことができる設計は非常に嬉しいですね。
先ほどの「Unlimiter」もそうなのですが、本来ミックス段階に戻って調整するべきものをマスター段でどうにかしようとするのは間違っているのかも知れません。
しかし、各パートが重なったことによる「低音域」や「トランジェント」の変化というマスター段ならではの処理を一手に行えるというのはOzoneならではの強みのような気もしています。
2.AI精度の大幅向上
冒頭にも言ったように、個人的にAIの精度が向上して「いや、流石にやりすぎっしょ」という提案が少なくなったように思います。
それにより各モジュールの処理精度が向上してOzone12全体のレベルアップにつながっています。
リファレンスターゲットの増加

25種類のターゲットが追加され全部で35種類になりました。
これにより楽曲に合った調整を提案してくれます。
これもひとえにAIの性能が向上したことの証左と呼べるでしょう。
気付いたのですが「All-purpose」というジャンルが追加されていました。
意味としては「多機能」「汎用的」などですが、こういうのがあるとなぜかホッとするのは私だけでしょうか。
ということでジャンルターゲットを切り替えて試してみました。
それぞれの良さが出ていて良いですね。
Master Assistantのカスタマイズ性

Master AssistantのCustomが追加されラウドネス値や使うモジュールをある程度選別できるなどカスタマイズ性が増えました。
何気に嬉しい機能です。
「Intensity」で各モジュールのかかり具合を調節もできます。
個人的に「Master Rebalance」は重いしあまり使いたくないのでOFFにして運用しています。
3.相応な価格、「買い」なのか…?
ぶっちゃけ、かなり高いです…。


Advancedは新規購入で、8万越え。
アップデートだとしても3万円を越えてきます。
ちなみに各グレードによって搭載されるモジュール数に差異があります。

11Standardを使用していた身からいうと、やはりどこかOzoneの全性能を活かしきれてない感はありました。ImpactやClarityらへんのモジュールでやっぱ変わって来てしまうのです。
個人的にOzone12の目玉は「IRC5」と「AI精度向上」なのでStandardでも賄えると言えばそうなのですが…。
それらの恩恵をフルに生かすにはAdvancedの方がやはり…。
非常に悩ましいところです。
Music Production Suite 8も登場
Ozone12の登場と同時にMPS8も発表となりました。
nectarやRX、neutronをお持ちで無いのであればこっちを買った方がお買い得です。

そして、ふと気付いたのですが、 Catalyst Series(FXEQ、Velvet、Aurora、Cascadia、Plasma)が同梱されています。

私の記憶違いだと思うのですが、このシリーズはバンドル化されないと何かで見たような気がしていたんですがあっさりと入ってしまいました。(多分記憶違いだと思います)
私は「なんやかんやゆーてバンドルにいつかは入ってくるっしょ」と思い購入してなかったのですが、これがあるので単品購入はほんと危険なんですよね。
なので、こちらのシリーズにも興味があり、かくiZotope製品を最新Verにアップデートしたい方はこのMPSを検討する余地はあります。
ちなみに私はMPS5.1で止めています。
モジュールをオフにする勇気
圧倒的な進化を遂げたOzone12。
モジュールが増えた、新機能が出た、というのも大事ですがそもそもの脳であるAI精度の向上が見られたのは何よりの吉報です。

まだ発売して間も無い事もありマニュアルは用意されていなかったので海外の動画等を見て勉強してこの記事を執筆していますがその中でも発見はありました。
前述した「Intensity」により提案の程度を変えられるようになったとはいえ、最終的なジャッジを下すのは我々人間であり、時には「モジュールをオフにする勇気」が必要であると感じました。
AIが世の中に浸透しまくっていて、画像・動画・音楽などの生成AIはいわゆる「ガチャ」を回すようなもんだという認識が広まってきているのでは無いでしょうか。
気にいるものが出るまで生成しまくる、気に入らなければ使わない。
その考え方をOzoneにも持ってくるべきで、提案されたものよりも自分が調整した方や使わない方が好みだと胸を張って言って良いのだと感じました。
マスタリングという職人技だらけの世界では、自分の耳や感性が間違ってしまっているような気がしてしまうのはとてもよく分かります。
それを他の生成AIを使うが如く、自分の好みによって作り変えていくAIとの「共存」がこのOzoneやiZotopeが実現したい世界のようにも感じました。
お値段こそ張りますが、気になった方はクロスグレード等を駆使して価格の確認だけでもしてみてください。
このブログ記事が、皆さんの音楽制作に役立つ情報を提供できることを願っています。
さらに詳しい情報や、ご意見ご感想があればぜひコメントをお待ちしています。