あばん
あばん
Antelopeが日替わりセールだって!
もーだん
もーだん
でもこのメーカーには知っとくべきことが…

マスタークロックや高級AD/DAコンバータで知られるAntelope Audio
近年はFPGAベースのVSTプラグインも展開し始め、先日の12/18から日替わりの年末セールを開催しています。

初日はLA-2Aをモデリングした「Opto 2A」が5$という格安で販売されています。

価格だけを見ると正直かなり魅力的です。

「この値段なら1つくらい…」
「UADやAcusticaは高いし、代わりになるかも…?」
と感じている方も多いはずです。

ただし結論から言うと、Antelope Audio のネイティブプラグインはかなり「人を選ぶ」製品です。 音質だけであれば満足する人もいますが、ワークフローや安定性まで含めると後悔する人が出てしまうと感じています。

この記事では、公式レビューやプロモーションではなく、 海外掲示板・実ユーザー・エンジニアの生身の評価をめちゃくちゃ調べまくった私が、

本当に買う価値があるのか
どの製品が「買い」なのか
どんな人に向いていて、どんな人には向かないのか

を冷静に整理して他の方が言えない部分にまで言及していきたいと思います。

Antelopeプラグインの立ち位置

音は良いが信頼性で他社に完敗

情報を調べていく上で、非常に面白かった点があります。

それは、FPGA版の評価は非常に高いがネイティブ版は「FPGAの劣化コピー」と言われるほど評価に開きがあるということです。

FPGA版とは、Antelope社製のハードウェア上で機能する独自技術を取り入れたプラグインです。DSPによるリアルタイム処理が唯一無二の強みを持つと高評価の声が多数ありました。

つまり、FPGA版とはハードウェアを所有して無いと使えないプラグインなのですが、今回セールになっているのはネイティブ版の方なのです。

あばん
あばん
いきなりめっちゃシビアじゃん。
もーだん
もーだん
ここで差があるということは知らなかった

しかし、ネイティブ版の音質を評価する声も多数ありました。

EQやプリアンプ系のものは実機の風味の再現度の高さを評価する声が多かったです。
どの製品が「買い」かについては後述していきますが、ネイティブ版の評価が低い理由は他の部分にも波及します。

ワークフローや安定性に賛否あり

特に海外の掲示板の情報を探っていると、

・「Windowsラップトップでドライバ問題なし。音質はトップクラス。小さな不満はあるが、高品質プラグインがあれば仕事に支障なし。」​

・「音が本当に良い。安価なインターフェースの中で最高の音。ハードウェア自体は素晴らしいし、UADを上回るポテンシャルあり」

・「ほとんどのプラグインは良い。特にゼロレイテンシートラッキングで優秀。ヴィンテージ系プリアンプ、コンプ、EQは試す価値あり。新規追加も悪くない」​

・「プラグインは素晴らしい。ハードも良いが、サブスクのミスステップ以外は問題なし」

という声があり、ハード経由のFPGA版拡張としてだったり、低価格で本格エミュが揃う所を評価しています。

逆に、

・「AntelopeとVoicemeeterのドライバ混在でWindows11+Pro Toolsが地獄。Pro Tools起動で音が出ず、再起動・ケーブル抜き差し必須。」

・「コンバーターとルーティングは最高だが、Pro Toolsでサンプルレート制御不可。サポート確認で『Pro Tools非対応』と返事。プロ製品として受け入れがたい」

・「音質と汎用性に惚れたが、全製品で故障。接続問題、クラックル音、マイク突然停止、ソフトウェアバグ。サポートほぼ不存在でAntelope離れした」

・「音質抜群、プラグイン良いが安定性問題。Logic Proで数週間後のミックス再開で設定消える。本当に困る。ヘッドホンとモニター出力もパワー不足」

という、批判的な声もありました。

私自身も、Discrete4を所有して使っているのですが、付属している「AFX2DAW」というプラグインが不調でずっと使えていません(下図ではずっとロードしたままです)。
また、ランチャー(ポータルソフトウェア)も起動が途中で止まったりして、たまーにストレスを抱えています。

つまり、音質自体は悪くない、むしろ良い部類という評価がある一方でワークフローや使用時の安定性に疑惑的な目を持つ評価が多いということです。

そして、Antelopeを評価する上で知っとくべきことがあります。

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AMÁRI逆相と継続的不具合

Antelope Audioの信頼性問題の象徴が2020-2021年のAMÁRI逆相事件です。
高級マスタリングコンバーター(約¥100万円クラス)がAD入力部で片チャンネル逆相という致命的欠陥を抱え、発売1年放置→ステルス修正という隠蔽疑惑で業界で大炎上しました。

恐らく、界隈の人で知らない人はいないという内容ですが、これによりAntelopeへトラウマを抱えた人、疑惑を根強く持っている人は少なくないのではないでしょうか。

そして、2025年現在も「USB96kHzクラッシュ」「ファーム更新で設定初期化」​「Pro Tools非対応」「サポート対応の不備」「新モデル連発」など不満の声は出てきています。

新モデル連発については私も思うところがあり、前述した「Discrete4」を持っているのですが、そこからの新製品を時系列にまとめました。

あばん
あばん
10数万円する製品なのに…
もーだん
もーだん
こんな頻度では買い換えられんよ

購入した翌年に「Discrete 4 Synergy Core」が発表された時は非常に歯がゆい思いをしました。既存ユーザーが置いてけぼりになってる感がどうしても出てしまうのです。

それでも、製品としての入出力の音は気に入っているので使い続けています。

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製品カテゴリ別評価

それでは、本題です。
音は良いと評判ならば、どれをどのように買うのがおすすめなのか。
私自身のレビューと、海外の情報を基にお届けしていきます。

BAE 1073MP

Neve 1073スタイルのマイクプリでAntelopeプラグインの中では評価が高いです。
また、これはプリアンプのみですが、EQも付属した「BAE-1073」もあります。

個人的にはこちらの方がおすすめです。
暖かさと太さは十分ですが、「UADと比べると深みが劣る」「さほど他メーカーと差が無い」という評価もあるのでこのタイプを未所持であれば、購入を検討してもいいでしょう。

VEQ-55A/B

API 550シリーズのエミュレーションです。
VEQ-55A/Bの両方評価が高く、私は55Aの方がシンプルで好みでした。
レビューの内容としては、正確性の高さや低域のタイトさで高評価を得ています。
私自身触ってみて、高域がキラッとする感じが好印象でした。

EQの総評は総じて「堅実だが個性が薄い」という評価が多いです。

SMT-100A

これは私自身のオススメで、Discrete4に付属している内部コンプとしてよくつかっています。

もっちりして中域が出てくる感じが非常に好きです。
操作が簡単なのは分かるのですが、プリセットが無いというのは何だかなぁ…という気はします。
他の製品もプリセットが充実しているとは言い難い印象です。

モデリングしている製品自体が少ないのでこれはセールで来たら狙おうと思っています。

Tubechild 670

Fairchild 670のモデリングです。
一部ユーザーは「この Fairchild は実機に近い」「他社の同等エミュレーションより良い」と評価していますが、やはりUADと比べると…という意見があるので、これも他製品を所持しているかどうかによって分かれる部分でしょう。

これをデモしている時に、GUIの不具合と、TIMEを切り替えてからのラグがあるという不具合にぶつかりました。

挙動は一度お試しいただいた方が良いかも知れません。
下の動画ではダイヤルを回し音が変化しているのにメーターが動かないということが起きています。

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他メーカーとの比較

このビンテージ機材のエミュレーションの競合と言えば、UAD、Plugin Alliance、Acustica Audio、Wavesなどもう猛者ぞろいの超レッドオーシャンです。

音質
Antelopeが秀でてるものもありますが、やはりUADやAcustica Audioの圧倒的な品質と品揃えに関しては一歩引かざるを得ないというレビューが多く、私自身もそう感じます。

コスパ
価格に関していうと、Wavesがやはりリードしています。
Antelopeも安くは無いのですが今回のようなセールがあると優位性を取れるかも知れません。

CPU負荷
Acustica AudioはCPU負荷が非常に高いですが、それ以外の負荷は軒並み同じぐらいで決して優位性があるかというとそうではありません。Antelopeの負荷が高いというレビューもありましたが、私の環境ではそうは感じませんでした
しかし、GUIの挙動が変だったりと「安心」して使えるという訳ではないのが本音です。

安定性
プロの現場で使われるには確固たる安定性が必要になってきます。他の4メーカーに関しては問題なく、万が一不具合があってもすぐに対処してくれるという安心感があります。

バランス
価格や出音など総合的に考えるとPlugin Allianceの名が挙がってくるのは自明でしょう。

重視ポイント向いているメーカー
安定性・即戦力UAD / Waves
実機再現の徹底Acustica
コスパと万能性Plugin Alliance
キャラ重視・セール狙いAntelope Audio

ネイティブ版プラグインに近年参入してきたとはいえ、結構難しいポジションにいることが分かります。
つまり、Antelope は「全部これで揃える」メーカーではなく、 今ある環境に“色を足す”サブウェポン的存在と考えるのが現実的です。

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ジレンマだらけのメーカー

会社のバックボーンや実際のデモを聴いて頂いて分かったと思うのですが、このAntelope Audioというメーカーは「音は良いが会社が信用できない」というとてつもないジレンマに陥っています。

品質としては十分でありながら、その力を十分に発揮できないでいるように感じます。

前述したように同社のオーディオインターフェースを使用している身からすると頑張って欲しいなという気持ちもありますが、現時点でのおすすめの立ち回り方としては、

・バンドルで買わずに単品狙い
・メイン用途ではなくサブとして導入
・必ずトライアルで動作確認

これを推奨します。

トライアルも微妙…

トライアルで動作確認と言いましたが、これもユーザーとしてはあまり良い思いのしないトライアルです。

というのも単品でのデモは存在せず、「Antelope Cosmos」という月額15ドルのサブスクを14日間無料で試せるというものです。

つまり、デモを開始したら15日目には支払いが発生し、期間が終わると全ての製品がデモをすることが出来なくなります。

あばん
あばん
どんだけ必死なんだよ…
もーだん
もーだん
って言いたくなっちゃうよね…

なので、軽々に「デモって見てね」と言えないのが正直なところです。

私も元はそちら側の人間

非常に魅力的なセールが始まった、とは思いますが軽々にオススメできるかというとなかなか難しいところです。実際に使ってみないと分からない部分や、過去に合った出来事などは知ってる人とそうでない人とでは大きな差になります。

そして、改めて信頼性というものを私自身が考えさせられました。

思う所は沢山あります。
私もYoutubeやブログ記事を見漁って多くの情報を収集してプラグインを買い漁っていました(今もですが)。

今は、曲がりなりにも発信する側になり、多くの方に観て頂いて広告収益や概要欄に貼ってるリンクからアフィリエイトの収入を得ていたりもしています。
それも各発信者、私自身、生活あってのことですから何かを言える立場ではないことは重々承知です。

しかし、私も元々は皆さんのように純粋に、必要で、大事な情報を収集したいという一心でこのページを見てくれているのだと思います。
手放しにAntelopeの製品を褒め称える情報を鵜呑みにするのではなく、ご自身の判断の中で購入を検討してください。

個人的には、音のキャラクターを理解した上で、必要なものだけを選び、セール価格で導入する、「全部入り」を狙うのではなく、 “一点突破”で付き合うというのが後悔しない買い方だと思います。

単なるマーケティングではなく、よりよい創作活動のためにこれからも頑張っていきます。
出来るだけ間違った情報をながさないように心がけて真摯に発信していきますので応援のほどよろしくお願いします。

このブログ記事が、皆さんの音楽制作に役立つ情報を提供できることを願っています。
さらに詳しい情報や、ご意見ご感想があればぜひコメントをお待ちしています。

ABOUT ME
池田 耕平
夫婦アコースティックデュオ「アバンdeモーダン」のメンバー。 作詞作曲とDTMを使った編曲やミキシングを担当。 メイン楽器はアコギとハーモニカ。 DAWはStudioOne。 ・音楽制作(BGM・ボカロ) ・夫婦ライバー ・YouTube運営(カバー・DTM解説) ・当ブログ運営