【完全保存版】コンプレッサーとオートメーションの違い、説明できますか?DTMerが必ず知るべき本当の話。



前回別の記事で取り上げたOpen Compressor。
コンプレッサーの挙動が分かりやすく可視化されていて私自身勉強になりました。
そして同時に根本的な疑問がわきました。
「コンプレッサーって結局、音量を下げているだけでは?」
「完璧にボリュームオートメーションを書けば、同じ音になるのでは?」
恥ずかしながら何となくで理解していたつもりになっていましたが、改めて考えてみると言葉に詰まるような問いでした。
今回めちゃくちゃ勉強したのでコンプレッサーとオートメーションの違いを私なりに噛み砕いて分かりやすく解説していきます。
蓋を開けてみれば「なんだそんなことか」となるかも知れませんが非常に奥が深く興味深く、皆さんの制作に活かせる内容となっていますのでぜひご覧ください。
内容としては以下の3つです。
・まず、結論。
・両者の違い
・それぞれの優位性
まず、結論。
前提として「アナログ的な歪み」や「現実的に不可能」というのは一旦置いておきます。
結論から話すと、「非現実的なほど神がかった理想的なボリュームオートメーション」を描くことが出来れば、理論上は全く同じ波形を再現する事は可能です。


そもそもコンプレッサーは「入力信号」と「設定(Threshold, Ratio, Attack, Release)」
から理想的なゲイン量を算出しているだけで、数学的にはただの「時間変化するボリューム」です。
そして「完璧なボリュームオートメーション」がそのゲイン量を1サンプル単位で完全再現できるなら、2つの出力は数学的にも聴感上も完全一致します。
これは、デジタル信号処理として絶対の事実です。
それでは何故コンプレッサーがここまで重宝されているのでしょうか?
ボリュームオートメーションではカバーできない部分とは何なのでしょうか?
両者の何が違うのか?
音そのものを変化させている
これが最大の大きな違いなのですが、まずそもそもの「動作原理」が全く異なります。
コンプレッサーが入力信号「A」に対して下記のような動作と計算を行います。
・検出(Peak, RMS, Opto)
・アタックによる遅延
・リリースによる戻り
・レシオとニーによる非線形カーブ
・etc…
これにより出力される信号は「B」という別物に成ります。
つまり音の波形やキャラクターそのものを変化させています。
しかし、ボリュームオートメーションの場合は信号「A」自体の波形は変えず音量を上下させているだけです。
トランジェント制御
上記の話にもややかぶってきますが、コンプレッサーはトランジェントの形を変えることができます。
トランジェントとは、音の立ち上がり部分のことで、この勾配(傾き)によってその音のキャラクター(距離感・太さなど)が決まります。
いわゆるアタックやリリースで設定できる部分で、例として出すと…
アタックが10ms → トランジェントは生き残る
アタックが1ms → トランジェントが削られて太くなる
リリース100ms → 余韻が滑らかに伸びる
リリース10ms → パンピングが生まれる
みたいな感じです。
もちろん音のソースによって変わってくるので一例として受け取ってください。
そしてこれらをコンプレッサーは1ミリ秒以下という凄まじい速さで制御しますが、オートメーションでは非常に難易度が高い部分です。
自動ボリューム系のプラグイン
「WavesのVocal Riderなどのオートボリューム系のプラグインがあるじゃないか」と声が聞こえて来そうですし、私も当然そう思いました。
確かにコンプレッサーも入力音に対して設定通りに音量を変化させているのだから結局同じだろうと思いますが、ここでも明確な差があります。
オートボリューム系は「全体の音量を目標レベルに近づける」ために「再生全体の音量傾向」に基づいて調整するため、瞬間的なピーク制御は苦手です。
つまり、コンプレッサーに比べて動作が圧倒的に遅いのです。
コンプレッサーの優位性
両者の違いをある程度理解していただいた上でコンプレッサーが何故ここまで重宝されるのかを説明します。
そもそも現実的に不可能
いきなりですが、割とこれが全てです。


前提として挙げていた「非現実的なほど神がかった理想的なボリュームオートメーション」を人力やプラグインの力を持ってしても描くことがそもそも非常に難しいのです。
1/44100秒単位(サンプル単位)で完璧にフェーダーを動かすと言えばその無謀さが理解しやすくなるかも知れません。
よしんば描けたとしても途方も無い時間と労力をそこに割くことになってしまいます。
つまりコンプレッサーとは非常にインテリジェンスな「自動音量調整機」だと言えます。
コンプレッサーによるキャラ作りが秀逸
もうひとつの前提も覆させてください。
「歪み」を抜きにして話を進めてきましたが、歪みや位相変化もコンプレッサーならではの圧倒的な優位性です。
SSLやLA−2Aなどの名だたる名機たちには独自の歪みや色を持っておりそれらを求めてエンジニアたちはコンプレッサーを使用します。
そして前述したトランジェントの成型と合わせて唯一無二のキャラクターを作ってくれます。
この「アナログの魔法」とも言うべき点においてオートメーションは及んでいません。
コンプレッサーは「音量調節機」であると同時に「質感加工機」であると言えます。
「再現ならできる」
冒頭から言っている「再現できる」と言う言葉は割と深くて、コンプレッサーの挙動を真似することは理論上は可能です(いくつかの前提条件付きで)。
しかし、あくまでも再現であってコンプレッサーはその場で倍音構成やトランジェント波形を作り変えることで新しい音を「偶発的に」生み出しています。
入力音のわずかな違いや前後の音の文脈によってコンプレッサーの内部は挙動を変えています。
つまり「コンプレッサーが作った生成物」を後追いで真似しているだけであり、リアルタイムで「音楽的に作用する」プロセスはオートメーションには存在しない
だから、結果だけを見ると似せることは可能でも、プロセス自体は全く違うということです。


それでは、オートメーションがどんな時に使えるのか?
優位性や使い分けについて見ていきましょう。
オートメーションの優位性
歪みと音量調節
大きな点としてオートメーションはボリュームを上下させているだけなので歪みません。
コンプレッサーなどの歪みは音楽的に優れている部分も有りますが、本来ノイズや歪みは忌避すべきものです。
音そのものの質感を変えたく無い時や、原音のニュアンスを極限まで守りたい場合はオートメーションの方が優れていると言えます。
そして局所的な調整、例えば、「サビの頭だけ派手にしたい」「この一文字だけ大きくしたい」といった音楽的な演出は、機械的なコンプには不可能です。
人間の感性で細かく描けるオートメーションの独壇場です。
どう使い分けるべきか?
多くのエンジニアはワークフローの中に下記のようにどちらも取り入れています。
① オートメーションで「音量問題」を整える
・句読点ごとに整える
・極端な大小を均す
・目立つ突出を避ける
・オートメーションで基礎を作る
これで聴感上の不安定さを減らしてから
② そのうえで、コンプレッサーで「質感」を作る
・前に出す
・押し出す
・密度を上げる
・ノリを作る
・アタックの速度を整える
・質感を揃える


理解の難しいエフェクト筆頭
Open Compressorを手にしたばっかりにこんな疑問にぶち当たってしまいました。
それでも色んな記事や動画を見て、勉強した甲斐があると思います。
「理論上は、再現できる」と言う言葉に全てが詰め込まれています。
その場で音楽的な偶然を生成していくコンプレッサーの凄さを改めて実感しました。
こんな気付きをこれからも発信していきます。
応援のほどよろしくお願いします。
このブログ記事が、皆さんの音楽制作に役立つ情報を提供できることを願っています。
さらに詳しい情報や、ご意見ご感想があればぜひコメントをお待ちしています。



