【ボーカルミックス完結】自宅録音を改善!2つのプラグインsonible prime:vocal&Pulsar Vocal Studioの使い方を完全解説!歌ってみたにもおすすめ!



以前にも解説したVocal studioですが、おかげさまでたくさんの方にご好評いただいています。
この製品自体でボーカルのミックスは上手くいくようになったのですが、その前段階での「下処理」について考える機会が増えました。
そして、Prime:vocal/Sonible を導入してみたら、いい感じにその悩みが払拭され、現状2つのプラグインのみでボーカルミックスが完結したので今回はそのお話をお届けしようと思います。
内容としては以下の3つです。
Prime:vocalの機能と使い方
ボーカルミックスのワークフロー
注意点とデメリット
ボーカルミックスが難しいと感じている人や宅録環境に問題を抱えている人など多くの人の助けになる記事になりますので是非最後までご覧ください。
製品概要
prime:vocalを使えば、レコーディング環境を問わず、世界最高クラスのスタジオクオリティのボーカルを実現できます。スタンドアロンソフトウェアとARAプラグイン(ベータ版)の両方で利用可能なprime:vocalは、デモスケッチや理想的とは言えない環境で録音されたボーカルを、ミキシングに適した商用レベルのオーディオに変換するための機能を満載しています。
Sonibleといえば、AIの技術を駆使した製品を多くリリースしているメーカーでEQやコンプレッサー、ディエッサーなどを既に出しています。
本製品にはそんな製品のノウハウがギュッと凝縮されているように感じてなりません。


Prime:vocalの特徴と機能
まずPrime:vocalが他のAIノイズ除去ツール(Cedar Audio VoiceX、iZotope RX など)と異なる点として下記が挙げられます。
・ボーカル特化学習:sonibleのAIモデルが、ボーカル音声の周波数特性、フォルマント構造、ダイナミクスパターンのみに特化して学習されたこと
・汎用ノイズ除去ツールは、あらゆる音声(楽器、環境音、スピーチ)に対応するため、ボーカルの微細な倍音構造を保持しにくい傾向がある
・Prime:vocalは、ボーカル信号から「歌われた周波数帯」と「ノイズ周波数帯」の確率的分離を行い、歌声の自然性を徹底的に保持
もう一つの特徴は、立ち上がりの速さと直感性です。
スタンドアロン、またはARA対応DAW内のプラグイン(ベータ版)として起動し、音声ファイルをドラッグ&ドロップするだけで、AIが自動分析を開始します。分析中は、リアルタイムで各セクションの処理を確認でき、気に入らない部分は即座に微調整できます。

5つのAIモジュール
そしてPrime:vocalの枢軸となる5つのモジュールが下記です。


まずは、ボーカルで試す前に私のYoutube用動画の音声で各モジュールの威力をお届けしていきます。
Noise Reduction・Room Reduction・Vocal Clean-Up
上記の動画でざっくりと分かって頂けるかと思います。
Noise Reductionでは「サー」というノイズや椅子を動かした音や低音の「ドン」という音が低減されています。
Reductionでは部屋の反響や共鳴が綺麗に除去されています。
Vocal Clean-Upではシビランス(「S」「Z」「SH」の刺さる音)とプロシビティ(「P」「T」「K」のポップノイズ)をタイプと性質を識別して処理します。
フェーダーマークからそれぞれの処理の大きさを「None・Soft・Medium・Strong」の4段階で設定できます。


Spectral Balance・Dynamics
そして上記のノイズ処理を行ったら、周波数バランスとダイナミクス調整を行います。
つまりEQとコンプみたいな処理をここでします。
Spectral Balanceは4つのプリセット(Vocal Low, Vocal High, Speech Low, Speech High)と、3つのカラーオプション(Warm, Neutral, Bright)を備えています。
DynamicsにあるLevel Ridingは自動で音量差を埋めてくれます。
Compressionは音声を圧縮して大小差を縮めてくれます。
それぞれ処理の強さを選びつつ、マスターダイヤルでも処理の深さを設定することが出来ます。
ボーカルミックスの実践ワークフロー
ボーカルミックスの鍵となるのは、「クリーンアップ」と「クリエイティブ加工」の2つのステップです。
今まではこれら2つを実現するには複数のプラグインを使い分ける必要がありましたが、前述したPrime:vocal → Pulsar Vocal Studioというワークフローを紹介していきます。
Prime:vocalでクリーンアップ
オリジナル女性ボーカル曲のサビで試してみます。
ここでは、
・ノイズの除去はほぼデフォルトのままだが、処理が強くなり過ぎないように若干和らげる
・Vocal Clean-UpはプロシビティをSoftに調整
・Vocal HighとNeutralで自然さを維持する
・Dynamicsではcompressionでの圧縮よりLevel Ridingで自然さを優先
この辺を意識してみました。
Pulsar Vocal Studioでのクリエイティブ加工
前段まででノイズやディエッサーを使ってのクリーンアップが終わっているのでここではボーカルの音作りに集中します。
動画の中では「DRIVE」セクションとコンプレッサーの「TYPE」を調整してみました。
個人的な好みや曲調、ボーカルにもよるのですが個人的にはゲルマニウムのカラっと前に出てくる感じが好きです。

「FOCUS」セクションはダイナミックEQが搭載されていて選択した帯域を強調することが出来ます。
強調し過ぎるほどの大きな信号が入ってきたら増加度を下げて対応してくれます。
各セクションについては冒頭で紹介した動画で解説しているので良かったらご覧ください。
それぞれのセクションでの比較
オケと合わせた状態での比較をしてみました。
Prime:vocalの時点で周波数バランスやダイナミクスを整えてあるのでだいぶ聴きやすくなったと思います。
さらにPulsar Vocal Studioでオケに埋もれないようにさらに加工を施して最終的にはリバーブを追加して厚みを出しました。


注意点とデメリット
prime:vocal が使えない時
ノイズ除去やボーカルクリーンアップの特徴をお伝えしてきましたが、正直「重度」のノイズに適用するのにはあまり向いていません。
・自宅録音の軽~中度環境ノイズ(PC ファン、冷蔵庫など)
・リモート会議システムの軽いノイズフロア
・「ラフボーカル」の 簡単な仕上げ
・建設音、街中の交通音など、重度の環境ノイズ
・クロストーク(他人の喋り声が混在)の除去
・極度のリバーブボーカル(ホールで大合唱など)
そもそもの録り音がモノを言う世界なので、万能というわけではないです。
いつもの宅録をワンランク・ツーランクアップさせるぐらいに考えておきましょう。
prime:vocalはARA対応DAWが吉
DAW上から直接オーディオファイルに適用させることが出来るのはARA対応DAWのみです。
スタンドアローンのアプリとしても使うことは出来ますが、一回音声を出力して、prime:vocalで編集して、書き出して、DAWに戻すというのはやや手間に感じます。
ご自身の使用DAWが対応しているかどうかはちゃんと確認してみるべきでしょう。
ARA対応DAW
・Studio One (v2以降)
・Logic Pro X (10.4以降、ただしApple Silicon版はRosettaモードで対応)
・Cubase / Nuendo (v10以降)
・Reaper (5.97以降)
・Cakewalk by BandLab
非対応DAW
・Ableton Live(2025年現在、ARA未対応)
・FL Studio(ARA非対応)
・Bitwig Studio(ARA非対応)
Pulsar Vocal Studioはプラグインで動作するのでARA対応かどうかは気にする必要はありません。
Pulsar Vocal Studioで音作り迷子?
Pulsar Vocal Studio は 11個のFXを備えていますが、「何度も FX を積み重ねる」アプローチはあまりお勧めできません。
Wide Stereo 70% + Thick Octave 80% + Chorus 80% + Reverb 70% + Delay 70% → ボーカルが「ざわざわ」して聴き疲れ、mix に埋もれる
・Wide Stereo 10-50%(ステレオ画像の自然性を保持)
・Reverb 20-30%(空間感を「微かに」感じさせる程度)
・Delay は「リズムに同期」させたリズミカルなディレイ
よりオケに馴染ませて共存させるためのワークフローを提供してくれるのがPulsar Vocal Studioです。
より過激だったり個性的で極端な音作りをする場合は別のプラグインの方が適していると感じます。


圧倒的なワークフローの改善
ノイズ除去から始まりダイナミクスを整えてオケに負けない太さを出していく作業は、今までのどんなボーカルにも施されてきた作業です。
それらを現代では2つのプラグインだけで完結させることが出来るようになりました。
どの工程も特別では無いだけに非常に強力で自分も当分はこれでいこうと思います。
必要であれば、プラスアルファでSoothe2などの共鳴を除去するプラグインを使ったりするぐらいだと思います。
リバーブやディレイと言った空間系FXに関しては手持ちでお気に入りのものを使用することも出来るし非常に柔軟性が高いボーカルチェーンだと思います。
ぜひ、皆さんも使ってみてください。
このブログ記事が、皆さんの音楽制作に役立つ情報を提供できることを願っています。
さらに詳しい情報や、ご意見ご感想があればぜひコメントをお待ちしています。



