あばん
あばん
たくさんEQ持ってるけど比較したことなかったなー

もーだん
もーだん
有料も無料もたくさん出てるからねー!

前回の記事をご覧いただけましたでしょうか?
UAD沼に魅入られて、その特性をあれやこれやと分析してみました。

PultecEQは有料の製品だけでなく無料でもモデリングされたプラグインは多く、ここで後学の為にもちゃんと比較しておくべきだと感じたので筆を執った次第です。

なので今回は、
Plugindocterを使った比較
実際の出音の比較
これらについてお届けしたいと思います。

心残りについて

いきなり何事かと思われるかも知れませんが、この記事のそもそもの発端はStudioOne付属のFatchannelに搭載されているPlutecのモデリングの比較でした。

StudioOne Fatchannel

しかしいくら探してもプラグインのデータを探すことが出来ず今回は泣く泣く断念…。
dll.ファイルがどこに格納されているかご存じの方がいらっしゃれば是非ご教示ください。

それでは本編スタートです。

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1.UAD/Pultec EQP‑1A

前回の記事で分析したので今回は割愛とします。
そしてこれから比較する各EQとの目安として扱っていきます。

非常に使いやすく世界中のエンジニアに重宝されてきたこの製品に待ったをかける者が出てくるのか期待大です。

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2. Acustica Audio/PURPLE3 P1

まずは、アナログモデリングの雄と私が勝手に呼んでいるAcustica AudioのPURPLE3 P1です。
何を隠そうUAD購入以前はこれが第一線でをバリバリと活躍してくれてました。

あばん
あばん
つまり…前妻的な…?

もーだん
もーだん
怖い例えだけど実際に比較してみよう…!

挿した段階での変化

プリアンプOFF
プリアンプON

まずいきなりUADとの変化が見られます。
5~9KHz辺りが1dBほど上がっている
20Hz以下の挙動が荒れている

20Hz以下となると耳で聞くことは難しいので大きな問題ではないのですがこのグラフを見ると何だかぞわぞわしますね。

周波数の変化

BOOST時の比較ですが、Qの幅や位置は大きく変わっていません。
同じ値(BOOST:5)で設定をしましたがCPSが60の時のみPURPLE3のピークが2~3dB下がります。
これは謎の挙動です…。

色々比べてみた結果としては、
UADと比べてLOWセクションはQが狭く、HIGHはQが広い
同じ値でもPURPLE3が0.5dB前後大きい
となりました。

倍音分布の比較

倍音少ない?!と思ってしまいそうですがそういう訳でもありません。

ちゃんと下の方にあります。

UADと比較するとギザギザとした部分がだいぶ下の方にあります。
これをどのように考えればいいのかの1つの仮説として、アナログ的なノイズがだいぶ抑えられておりクリーンな音であるという説です。

しかし他のプラグインと比較しても突出して低く、使用してた時は味付けの濃い印象だったのでこれが技術の賜物なのかそうでないのかは今後の研究課題とします。

INPUT量による周波数&倍音変化

このPURPLE3にはINPUT TRIMが付属しています。
音量の上下がなされることはなく、倍音の量を調節するために使用します。

しかし、INPUTが「7」を超えたあたりから急激に周波数と倍音の分布が大きく崩れます。

あばん
あばん
ひょっとして使いこなすの難しいプラグインですか…?

もーだん
もーだん
なんだかちょっと癖があるみたいだね…

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3.IK Multimedia / TR5 EQP-1A

私が1番最初に手に入れたPlutecEQです。
アコギやボーカルに片っ端からかけてめちゃくちゃ愛用してました。

挿した段階での変化&周波数変化

50Hzぐらいからローカットが入る
10KHz以上が波打っている

他のプラグインと比べても独特な周波数分布となっています。

LOWはUADに比べて、Q幅が少しだけ広く音量変化が少し少なめです。
HIGHは逆に音量変化が少し大きいです。

倍音分布の比較

TR5 EQP-1A単体
UAD(赤色)との比較

倍音量はUADよりも多い印象です。
ピンクと水色の線が2本あるのはLRで倍音分布が違うためで、なんだかそれが凄くアナログっぽくて良いです。
後述する音の比較が楽しみです。

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4.Kiive Audio / Warmy EP1A【無料】

次に登場するのがKiive Audio / Warmy EP1Aです。
実は、今回の比較記事の中で1番楽しみにしている製品で、Kiive Audioの製品力が高いとネット界隈でちらほらと目にしており期待が高まります。

TUBEセクションと周波数特性について

他のメーカーには見られないTUBEセクションがあります。
THDで入力音量を決めて歪み量や周波数特性を変化させます。

ポイントとしては、
各TUBEは割とフラットで音量が0.3dBほど下がる
THDを上げていくとそれぞれ5KHz辺りにDIPが出来る
ECC88は100Hz辺りが膨らむ
です。

EQセクションについて

2つのモードによる出力音量に差があるので見比べるしかできませんでしたが、それぞれのTUBEによるQ幅や音量変化は顕著には見られませんでした。
THDを上げたときの周波数特性をそのまま引き継がれるのでそこでの差異はあります。

UADでは特徴的だったLOWのBOOSTを1~2に設定した時のめちゃくちゃ広いQは見られず素直なシェルビングとなっていました。

UAD(赤)Kiive(ピンク)

LOW:30 BOOST&ATTEN:4
HIGH:8 BOOST:4 BW:10

トリックと呼ばれる有名な上記の条件で比較してみました。
UADと比べて効き方やQ幅が鋭い印象です。
しかし高域側の設定で10KHz以上の設定になった途端にQが広くなります。

Q幅は広い方が音が破綻しない印象があるので私が使う際は意識したいです。

倍音分布の比較

TUBE:12AX7
TUBE:ECC88

UADと比較して、倍音の数が多く音に与える影響はkiiveの方が強そうです。
またサチュレーション量は12AX7の方が多いことが分かります。
そして「THD」と同じように「INPUT」でも歪み量は変化します。

私が使い分けていく際は、
INPUTで音量と歪みを調節
THDで歪み方を調節
の順番で運用しようと思います。

オーバーサンプリングについて

この製品にはOVSMPという値があり、オーバーサンプリングの設定が出来ます。
今まで「オーバーサンプリングを使うと、音が良くなるけどCPUの負荷が高まる」ぐらいにしか理解していませんでした。
そして歪みを扱う時にはオーバーサンプリングが有効という話も耳にしていました。

その点と点がここで線になります。

INPUT:2.5 THD7と大げさに歪ませてみました。
ここから沢山の事が示唆されます。

必ずしも倍音の線が多いと良い訳ではない
目立つべき倍音は決まっている

明瞭な歪みを作るためにオーバーサンプリングは一役買っている。
そしてそれが「良い音」の要素の一つであると考えることが出来ました。

あばん
あばん
歪みってめちゃくちゃ奥が深いんだね…

もーだん
もーだん
CPUの無事を祈るばかりだね…

5.Analog Obsession / Rare【無料】

最後にエントリーするのはAnalog Obsession / Rareです。
このメーカーは沢山の無料プラグインをリリースされており、どれもアナログライクで質の高いものばかりです。

その実力のほどを見ていきましょう。

周波数特性

10Hz以下がロールオフされていますが基本的にはフラットな特性を持っています。

LOWセクションのBOOSTに関してのみGUIの見た目とダイヤル値があっていません。
見た目は5なのにダイヤルは3.5を指しています。
今回の検証では、見た目のGUIに合わせて設定してみます。

UAD(赤)Rare(ピンク)

UADよりも大きい変化の値を見せました。
Q幅はやや狭いですね。
ここまで来るとUADの変化量が少ないのでは…?という気持ちになります。

CPS:60 BOOST&ATTEN:7
上記の設定だとUADの方が鋭いDIPと大きな音量変化を表します。
各EQの挙動をつかむのは難しそうです。

倍音分布の比較

この製品にもオーバーサンプリングが搭載されています。
やや分かりづらいのですが、「ANALOG OBSESSION」と書かれている部分をクリックすると文字が赤色になります。
そうするとX4のオーバーサンプリングが適用されます。

グラフを見てみると、なんとも窮屈そうな結果となりました。
倍音量としては多いです。
INPUTノブが無く、歪み量は調整できないのでこの歪みがそのままこの製品の特色となりそうです。

音色の比較

あばん
あばん
やっと音の比較が来たね…!

もーだん
もーだん
結局、出音がすべてだからね…!

私自身、違いがどのぐらい分かるのかとてもドキドキしていますが検証していきます。

検証方法は以下の通りです。
まず、挿しただけの状態を各パートに準備
加えてBUSに下記の設定で使用
LOWはBOOST&ATTEN:4 CPS:30
HIGHはBOOST:5 KCS:8 BD:10 ATTENは無し
GainMatchとリミッターを使用して音量をそろえる
となります。

検証

バイパス状態のサンプルが下記となります。

NONE

それでは一挙に聴いていきましょう。

UAD
PURPLE
TR-5
WARMY
RARE

いかがだったでしょうか?
私自身聴き分けられるかなと思い、ブラインドテストをしてみまして無事全問当てることが出来ました(2回挑戦して2回成功)。

あばん
あばん
まぁ記事を執筆するんだから…ねぇ…?

もーだん
もーだん
何回も聴きまくったけどね!

それぞれの個人的感想

言わずもがな、どの製品も「NONE」とは全然違いました。
各パートが際立ちすっきりしつつまとまりのある音楽になって、改めてアナログ機材の強みとこのEQ独自の「魔法の設定」の有用性を知りました。

UAD/Pultec EQP‑1A
1番まとまりがあって上品でした。さすがUADというか。纏う「空気感」も1番良かったと思います。低域はもっちりとするけどEQの効きは柔らかく音量はさほど上がってない印象で質感が変わった印象です。

Acustica Audio/PURPLE3 P1
1番低域・高域共にインパクトがあったのがこれでした。全体的に前に出てくる印象があり、音の質感もまったりとしてて個人的に聴いていて一番気持ちの良い私好みの音です。

IK Multimedia / TR5 EQP-1A
1番おとなしめという印象でした。上品というか綺麗めというか。他の製品と少し印象が違って聞こえました。低域のロールオフや倍音分布が影響していると考えられます。

Kiive Audio / Warmy EP1A
他のEQと比べてATTENの効きがとても良くすごくすっきりとした印象になりました。単純な比較としては悩ましいですが音の印象は「鮮やか」で、音の作り込みの幅が1番広いと思いました。
ちなみにTUBEをECC88に変更したものも共有しておきます。

TUBE:ECC88

Analog Obsession / Rare
UADやPURPLEと聴き分けるのが一番難しかったのがこれでした。印象としては元気いっぱいな音という感じです。歪み感やEQの感じを含めて上品とは違うベクトルの力強さを感じました。

CPU負荷の比較

各パート&BUSに挿した各5つのプラグインのCPU負荷を比較します。

圧巻なのはPURPLE3の重さです。
もちろん知っていましたし、これが原因で…的なところはあります。
これに限らずAcustica Audioは重い印象があるので購入を検討する際は1回デモをすることを強くお勧めします。

他の4製品は似たようなものですが、無料勢のCPU負荷が揃って軽いのは興味深いですね。

まとめ

いかがだったでしょうか?
私自身、とても興味深く、そして楽しく比較検証することが出来ました。

あばん
あばん
実際に記事にするのは…

もーだん
もーだん
ちょっと大変だったけれどね…

感想としては、
PURPLEは音が好きだけど負荷が高過ぎる
Rare無料なのにめっちゃいいやん
けど、なんだかんだ総合力でUAD
という感じです。

結果的に超大作となってしまいましたが、最後までお付き合い頂き有難うございました。

ABOUT ME
池田 耕平
夫婦アコースティックデュオ「アバンdeモーダン」のメンバー。 作詞作曲とDTMを使った編曲やミキシングを担当。 メイン楽器はアコギとハーモニカ。 DAWはStudioOne。 ・音楽制作(BGM・ボカロ) ・夫婦ライバー ・YouTube運営(カバー・DTM解説) ・当ブログ運営