Heavyocity「Oblivion Drums」レビュー。3つのエンジンで作る、暴力的で精密なシネマティック・ドラム音源



破壊的、暴力的なドラム音源がHeavyocityから登場しました。
その名も「Oblivion Drums」
実体験として、重厚で凶暴なドラムが似合う退廃的な曲を作っていた時、音作りで大きな壁にぶち当たりました。
どんなに歪ませたり加工をしても重さや凶暴さが出てこず、チープな音になっていった苦い過去が蘇ります。


「早く入手していればどれだけ曲作りが楽になっただろう」
「自分では作れない音からどれだけ想像力を膨らませられただろう」
皆さんがそんな後悔をしないためにも本記事でOblivion Drumsの特徴や使い方、おすすめの使用方法やジャンルをお届けします。
製品概要
OBLIVION DRUMSは、30,000以上のサンプル、99のプリセット、そして500以上のループを、Kit Designer、Ensemble Designer、Loop Designerという3つの楽器で提供します。すべてが、強烈なアグレッシブサウンドのために設計されています。ロードして演奏すれば、最初の音から、生々しく、常軌を逸したパワーがあなたを襲います。心臓の弱い人にはお勧めできません。
プリセット紹介動画を見るだけでもめちゃくちゃ迫力があって重厚かつ凶暴な音であることが分かります。
では実際に基本的な使い方と個人的に気に入ったポイントをお届けしていきます。
Drum Kit Designer

一番多用するであろう「Drum Kit Designer」です。
鍵盤16個に音源を割り当ててスタンダードなサンプラーとして機能します。
プリセットキットも準備されていますが個別のサンプルを変更することが可能です。
つまり新しく「自分だけのキットを作れる」と言うことです。
そして各Chごとに独立したFXチェーンを設定することが出来ます。

また、後述する「Ensemble Designer」にもありますが、Close、OH、Room、Hall、LFE の5つのマイクチャンネルで空間系も調節できます。
見慣れない「LFE」はサブベース帯を増強するものです。
空間を大きく録ると低域はぼやけて薄くなりがちですが「LFE」を盛ることで非常に圧のある低域を作り出すことができます。
公式の説明にもある通りサンプルの数は30000個を超えており、ベロシティレイヤーやラウンドロビンを搭載しているので、非常に表現力が豊かでかつ高音質となっています。
ちなみに画面右側にある「RR」がラウンドロビンのスイッチとなっています。


Drum Loop Designer
個人的に一番使い勝手が良く、この音源のエース的存在と言えるのが「Loop Designer」です。
500以上のループ素材を組み合わせて、指1本でハイブリッドなドラムパターンを構築することが出来ます。

低/中/高ごとに1オクターブ分の鍵盤が割り当てられておりそれぞれをカスタマイズしたりループ素材を変更することも出来ます。
またStutter Keysでスタッター効果を付与したり、FXの効きをオートメーション化出来たりするので、独創的かつ動きのあるループへと簡単に作り変えることが出来ます。
勿論、この「Loop Designer」だけでドラムトラックを完成させることは出来ますが、個人的には先述の「Drum Kit Designer」と組み合わせるのが最強だと思っています。
難しい音作り、ドラムパターン、動きのあるFX、これらが「Loop Designer」で完結できてしまうというのは非常に有難いです。
Drum Ensemble Designer
この音源の革新的な部分である「Ensemble Designer」。
視覚的にドラムパーツを配置できる仮想ステージが設定されており、前述の5つのマイクで圧倒的な空間演出を可能にします。

「Ensemble Designer」の独自機能ですが、5つのマイク毎に音響特性が異なっています。
Hallマイクは手前で最も静かで奥に行くほど大きくなる。
Roomマイクはステージの中央付近でピークを迎える。
と言った具合にかなり自然なスタジオ特有の音響を再現しています。
ただ、個人的にはあまり使わなそうだと感じました。
各ドラムに Crescendo、Swell、Flam、Roll、Repeat といった演奏モードもありますが学習コストがやや高そうで、いい感じのドラムキットを即座に鳴らせるという印象が無いためです。
強いて言えば、プリセットの「Cinematic Modwheel Jam」はかなりいい感じでした。
ただこれもモノによってはモジュレーションホイールの設定が済んでおらず、自分でやるのがちょっと手間だと感じてしまいます。
ちなみにプリセット名にも書かれている「STR」や「TPR」は Straight / Triplet という意味で、STR はイーブン系、TRP は3連符系です。
本音レビュー
普段はBFDやAD2を使ってドラムトラックを製作しているのですが、「Heavyocity…めちゃくちゃ音良くね…?」が率直な第一印象です。
ストリングスやブラスなどのシネマティック系音源メーカーのイメージがあるのでドラム音源に関してはちょっと舐めていたのですが、非常にビビりました。
30000個あるサンプルも、水増ししたようなチープなものばかりではなく、どれもちゃんと使えるし、似た処理では無く個性が立っています。
ただ、それだけ個性が強い音源なので使うジャンルや人を選びます。
使いやすいジャンルで思いつくのは下記の通りです。
ダークシネマティック
メタル
グリッヂ
サイバーパンク
トレーラー・劇伴
この音源でJazzやPop、爽やかで軽快な曲を作ろうと思うとかなり無理があるし音源自体の良さを消してしまいます。
また、各サンプルが全帯域に渡って強いパワーを持っているので、他の楽器との棲み分けやアレンジ・ミックスで手こずる可能性もあります。


AI曲のリアレンジ
もうひとつ感じたのはAI曲のリアレンジに非常に有効なのではないか?ということです。
昨今のAIの進化は目覚ましく、さまざまな音楽ジャンルを取り入れてアレンジの幅を広げている印象です。
そんな中、AI曲の中で歪んだドラムが使われていた場合などに、わざわざ苦手な音作りを真似てやってみて本来の楽曲制作になかなか取りかかれないというパターンは結構あります。
そんな時にこのような音源があれば非常に助かると感じました。


自分の得意分野を伸ばすのも大事ですが、たまには違った音楽ジャンルに触れるのも大事です。
その際に、ある程度のドレスコードというか定型を持っていないとせっかく挑戦したのに「なんか思った感じにならない」というネガティブな印象が付いてしまいがちです。
汎用性こそ低いものの「ある1点」においてはファーストチョイスになれる。
持っておいて損は無い、むしろ新しい創作の扉を開放してくれる可能性すらある「Oblivion Drums」をぜひ使ってみて下さい。
このブログ記事が、皆さんの音楽制作に役立つ情報を提供できることを願っています。
さらに詳しい情報や、ご意見ご感想があればぜひコメントをお待ちしています。



