自分だけの楽曲という魅惑的な響き。
「歌詞は書けるのに…」「メロディはなんとなくあるんだけど…」
そういった悩みを持っている方も多いのではないでしょうか?
今回の記事では、依頼事例を挙げながら、作業工程を公開&解説していきたいと思います。(依頼主には許諾済み)
また、ファンタジー系の曲なのでどのような編曲工程を踏めばいいか知りたいという方にも有益な情報をお渡しできると思います。
同じような悩みや、オリジナル曲作りの願望を持っている方の助けとなれば幸いです。
作曲工程〜前編〜
依頼内容について
今回の依頼主は、以下の通りです。
ボーカリスト(歌い手)
歌詞とメロディは作れる
ライブや配信でオリジナル曲を歌いたい
CDを作りたい
つまり私への依頼内容は
編曲・ミックス・マスタリングとなります。
大部分は編曲という作業が占めていく訳なのですが、それだけじゃないんだよ!というところも含めて今回は全てお伝えしていきたいと思っています。
データ受け渡し&世界観の共有
まず、依頼主さんのボイスメモをたくさん受け取ります。

そして、曲の歌詞と曲のイメージや使って欲しい楽器などのイメージを聞きます。
当然、参考楽曲や使って欲しい楽器はそれを全部飲み込むわけではなく、私なりのアレンジやアイデアを追加していきます。


参考曲に「忘れじの言の葉」を挙げてもらったので、ファンタジー系の音楽だと理解することが出来ました。これと歌詞を参考にしながら曲の世界観を共有していきます。
作曲工程〜中編〜
ボーカルデータの確認
まずは、聴いてもらいましょう。
貰ったままのデータを一部抜粋します。
この貰ったデータをDAWに貼り付けて作業がスタートします。
BPM合わせ&メロディデータ作り
まず行うのは、ピッチを探りながらBPMや拍子を決めていきます。
ボーカルはソフトシンセを使ってMIDIデータに打ち込んでいきます。
ここが難航ポイントであり曲作りの全てを決めていく部分です。

ポイントとしてはいくつかあって、
作曲者の意図を最大限汲み取る
仮歌の段階でピッチをピタリと当てるのは僕でも難しいので多少スケールから外れていても「ここはこの音だろう」と類推しながら進めていきます。
しかし、頻繁に出てくるメロディが「ん?」という流れであれば、その部分は作曲の中でのこだわりポイントとなるので、それに合う編曲やコードを作る方に切り替えます。
BPMや拍子は慎重に
前述したように1曲分のボーカルを丸々貰うのですが、BPMがどうしても揺れてしまいます。
なので、世界観や参考曲を聴きながら設定していく必要があります。
今回は、3拍子のBPM134で進めていきました。
時間をかけすぎない
この作業、実はかなり大変です…。
ボイスメモの音を聴きつつ、メロダインも参考にしつつ、1番と2番の違いを理解しつつ、ちゃんと歌えてどこが盛り上がりどころになるかを想像しながら作業をしていきます。
そしてこの後に「編曲」というメインの作業が残っているのであまり時間をかけてはいられないのです。
そうして1曲全体のMIDIデータが出来上がります。
コードを付けていく
普段の曲作りはギターでコードを付けていくことが多いですが、この場合はピアノでコードを付けていきます。
先ほど作ったボーカルのMIDIと付き合わせながら作っていくことが出来ます。
ここが面白いところでもあるのですが、自分では作れないようなコード進行が産まれまくります。

一部抜粋ですが、自分ではなかなか思いつかないコード進行です。
メロディから作っていくとこういう流れにもできるんだと自分の勉強にもなるので一石二鳥です。
この曲の場合、ファンタジーというか不思議で神秘的で妖しい世界観が良いだろうと思ったので分数コードやディミニッシュなど複雑な和音のコードを多用しました。
ここで世界観や曲の流れがおおよそ決まってしまうので、自分の世界観も足しつつ編曲していきます。
これもこの後の「肉付け」の部分に大きく関わってくる大事な作業です。
クリック用のリズムトラックを足してひとまずここの工程は完了となります。
ここまで出来たら、この状態で依頼主さんに音源データを送って、
メロディに不備はないか
BPMや拍子は問題ないか
コードの雰囲気や世界観の方向性
などを確認してもらいます。
もしメロディの不備や変更したいとの連絡が来れば、またデータを送ってもらい、修正をしていきます。
作曲工程〜後編〜
いよいよ楽器を入れていきながら楽曲として生まれ変わらせていきます。
ハープ&オルゴール
まず、ファンタジーケルトと言えば「ハープ」を入れていきます。
Native InstrumentsのKONTAKT音源で、伴奏とメロディを分けて入れます。
他にも楽器が入るのでスペースを空けながらアルペジオっぽく分散させていきます。
そして、レイヤーするようにオルゴール音源を重ねていきます。
依頼主のリクエスト部分でもあるので、ここが楽曲の根幹として重ねていきます。
ベース
ベース音源は迷いましたが、MODOBASS2のウッドベースにしました。
アコースティックな雰囲気が出たような気がします。
温かみがありつつ、3拍子でそんなに動きの多くないベースラインにしました。
バウロン(リズム楽器)
ファンタジーケルト音楽はバウロンという打楽器を使います。
これはKONTAKT音源で以前記事を書きました。
ふんわりと楽曲を支えてもらうように入れていきます。
アコースティックギター
ギターを入れて3拍子のリズム感やコード感を補強します。
実際に私が弾いても良いのですが音源がほんとに優秀なんですよね…。
Native Instruments社のものから良い感じのプリセットを選んでいきます。
アイリッシュホイッスル
ETHNO WORLD 6 INSTRUMENTSという音源で笛の音を入れます。
ボーカルのメロディと対旋律のように打ち込んでいきます。
ボーカルの邪魔にならないようにしながら「ファンタジー」の雰囲気を付けていきます。
パッドっぽいシンセ
最近お気に入りのSynthMaster3で空間を埋めるような揺れている音を入れていきます。
コード進行の時点で妖しい雰囲気が出ているのでボイシングを変えてみて邪魔しないような帯域を探しながら打ち込みます。
編曲が完成
ここまで出来たら「ボーカルメロディ入りver」と「カラオケver」を送って、レコーディングに備えてもらいます。
ひとまずここまでで私の「編曲」の作業は終わりとなります。
劇的ビフォーアフター
それでは一旦聴いて頂きたいと思います。
上記の編曲全部盛りです。
前述したビフォーがこちらです。
この後の工程としては、
レコーディング
ミックス
マスタリング
となっていくのですが、編曲の部分とは異なる分野になるので別途記事にしていきたいと思います。
ちなみに
レコーディングやミックスまで終わらせたものがこちらになります。
本来ならここで、ボーカルにダブルを加えたりハモリを作ったりもするのですがこの曲では無しでリバーブの雰囲気で神秘的な感じを出しました。
こうやって見てみると
手前味噌ながら、依頼主に寄り添った編曲が出来ているなぁと感じています。
歌詞や参考楽曲を提示してくれると非常に方向性が固めやすくなる印象もあります。
楽曲製作にふわっとした憧れや願望をお持ちの方は、X(旧Twitter)上で依頼先を探してみるのも良いかも知れません。
過去記事にした「深夜の2時間DTM」に参加している方は創作意欲が高く依頼を受け付けている方もお見えになります。(実際は相談してみてください)
クオリティも猛者揃いだと感じています。
そして!
そして!
本記事を読んで私に興味を持ってもらえた方は、上記作業を提供しているのでページ上部の「お問い合わせ」や各種SNSからのDM等でぜひ相談してみてください。
ただ、私が遅筆かつ、出来るだけ依頼者の要望に寄り添いたいということもあり、多くお受けできない事があるので、納期や料金など相談していただければと思います。
また、本記事はYouTubeでも解説していますので良かったらご覧ください。
このブログ記事が、皆さんの音楽制作に役立つ情報を提供できることを願っています。
さらに詳しい情報や、ご意見ご感想があればぜひコメントをお待ちしています。